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糖尿病性腎症の生活指導と看護|透析導入の予防を目指す具体的な関わり方とアセスメントを解説

読者様

糖尿病の患者さんが透析導入になっていくのを見ることが多く、自分ができる関わりがないか悩んでいます。

筆者

糖尿病性腎症の看護では多角的な関わりが必要なので、悩むことも多いですよね。

糖尿病性腎症は日本における透析導入原因の第1位です。

一度進行した腎障害の回復は困難で、放置すれば心不全や脳血管障害など命に関わる合併症を招くリスクがあります。

腎機能低下を予防には、日常生活のリスクを察知し、適切なタイミングで医師やチームに報告することです。

本記事では看護師に向けた糖尿病性腎症の基礎知識から、緊急度の高い観察ポイントを解説します。

患者さんのやる気を引き出す生活指導のコツも紹介しているため、明日からの臨床に活かしましょう。

目次

糖尿病性腎症とは?基礎知識を解説

糖尿病性腎症の理解を深め、病態が全身に与える影響を正しく理解することで、患者さんへの指導における説得力と根拠をアップデートしましょう。

糖尿病性腎症の発症メカニズム

糖尿病性腎症は長期間の高血糖状態が続くことで、腎臓の糸球体(毛細血管の塊)がダメージを受ける微小血管障害です。

高血糖は血管内皮を傷つけるだけでなく、血管内にAGEs(糖化最終生成物)を蓄積させ、濾過機能の要である糸球体を硬化させます。

その結果、本来は体内に留まるべき蛋白質(アルブミン)が尿中に漏れ出し、最終的には腎不全へと至ります。

ステージ分類と「第3期」の重要性

腎症の進行度は、尿中アルブミン値、尿蛋白量、そしてeGFR(推定糸球体濾過量)によって第1期から第5期に分類されます。

ステージ分類状態看護の重点ポイント
第1期
(腎症前期)
腎機能は正常
自覚症状なし
徹底した血糖コントロールの支援
第2期
(早期腎症期)
微量アルブミン尿が出現血糖管理に加え厳格な血圧管理の開始
第3期
(顕性腎症期)
蛋白尿が持続
浮腫が持続し始める
蛋白制限の導入と重症化予防
第4期
(腎不全期)
腎機能が高度低下
尿毒症症状に注意
透析導入に向けた準備とQOLの維持
第5期
(透析療法期)
末期腎不全
生命維持に透析や移植が必要
透析合併症の予防と自己管理支援

日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」の基準を参考に作成。

特に第3期(顕性腎症期)は、食事療法に蛋白制限が加わるなど、患者さんの生活が大きく変わる時期です

この時期に適切に介入することが、透析導入を予防できる可能性を高めます。

糖尿病性腎症の各ステージにおける治療のゴール

糖尿病性腎症の看護において目指すべき最終的なゴールは、単に数値を下げることではありません。

「透析を回避し、心血管疾患を防いで自分らしい生活を維持すること」にあります。

各ステージにおける目標は以下の通りです。

【第1期〜第2期】腎症の寛解(正常化)を目指す

この時期では徹底した血糖と血圧の管理により、出現し始めた微量アルブミン尿を消失させることを目標とします。

【第3期】進行の阻止・遅延で透析を回避する

蛋白尿が持続する第3期では透析導入をできる限り阻止・遅延することを目標に、食事療法や薬剤治療を継続します。

【第4期】QOLの維持と安全な次への備え

腎不全期に入った場合、目標は合併症を起こさずに日常生活を維持することにシフトします。

もし透析導入となる場合でも、患者さんが納得して安全に治療のステップに進めるよう心身を整えることを支援しましょう。

ステージごとの目標を共有することで、制限や治療の必要性についての患者さんの理解が深まります。

看護のポイント

糖尿病性腎症の患者さんの観察では、腎機能の数値だけでなく全身の血管が傷ついているという視点を持つことが大切です。

優先順位の高い観察項目と、アセスメントのコツを解説します。

血糖コントロール

糖尿病性腎症の患者さんでは一般的に血糖コントロールの目標としてHbA1c:7.0%未満を目指します。

具体的な血糖値などは患者さんの腎機能や低血糖リスクに応じて個別設定されるため、確認しましょう。

また、糖尿病性腎症では低血糖のリスクもあり、原因は以下の通りです。

糖尿病性腎症患者が低血糖になりやすい原因
  • 薬剤の蓄積
    腎機能低下により、インスリンや経口血糖降下薬の排泄が遅れ、体内に成分が残りやすくなります。
  • 無自覚低血糖
    自律神経障害を併発している場合、冷汗や動悸といった低血糖症状がないままいきなり意識障害に陥る無自覚低血糖のリスクが高まります。

患者さんの食事量や血糖値の推移からコントロール不良が疑われる場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

循環動態と水分バランス(浮腫・体重・血圧)

腎機能が低下すると排泄機能が滞り、水分が体内に貯留しやすくなります。

以下のポイントを押さえておくと異常の早期発見に役立ちます。

観察内容ポイント
浮腫下腿、足背
寝たきりの患者さんでは仙骨部
体重管理前日比で1kg以上の増加は水分の停滞を示す
心不全や肺水腫を防ぐため医師に報告
血圧管理130/80mmHg未満

糖尿病性腎症で血圧が高い状態が続くと糸球体への圧力を高め、腎症をさらに悪化させる可能性があります。

内服薬を確認するなど血圧コントロールを良好に保つ働きかけが大切です。

塩分制限

ガイドラインで示される塩分6g/日未満という数値には、血圧を下げること以外に2つの大きな医学的根拠があります。

糸球体高濾過の抑制

塩分を過剰に摂取すると、体内の浸透圧を維持するために血液量が増加します。

これにより糸球体に過剰な圧力がかかり、高濾過の状態になり腎機能の更なる悪化に繋がります。

降圧薬(RAS阻害薬)の効果最大化

糖尿病腎症の治療で使用される「ARB」や「ACE阻害薬」は腎臓の出口の血管を広げて圧を逃し腎臓を保護する薬です。

塩分摂取量が多いと腎保護効果が十分に発揮されないため、薬を正しく効かせる土台作りとして減塩が重要です。

日本人の平均塩分摂取量は9.7g/日程度と言われています。

6g/日まで減らすには患者さん自身の努力が必須であり、動機付けが必要になります。

減塩の必要性を理解し、患者さんに伝えられることが大切です。

蛋白制限

腎不全=蛋白質を制限するというイメージが強いですが、なぜ蛋白質を制限するのでしょうか。

蛋白質の代謝産物である尿素窒素などは腎臓から排泄されます。

機能が低下した腎臓にとってこれらの老廃物の排泄は負担がかかり、ネフロンが疲弊します。

残されたネフロンの疲弊を防ぎ、腎機能を維持することが蛋白制限の目的です。

蛋白制限を行う際エネルギー不足を避ける必要があります。

エネルギー不足により筋組織を分解

エネルギーが不足すると身体は生命維持のために、脂肪だけでなく筋肉などの組織を分解してエネルギーを得ようとします。(異化作用)

老廃物の増加

筋肉が分解される際、蛋白質が代謝され老廃物(尿素窒素やクレアチニンなど)が発生します。

蛋白制限をしているのに、体内で作られた老廃物によって腎臓に負担がかかり、腎不全が悪化する可能性があります。

将来的にサルコペニアとなる恐れ

エネルギー不足が続くと、筋肉量の減少(サルコペニア)や免疫力・抵抗力の低下を招く恐れがあります。

蛋白質は控えつつ、ご飯や油脂類(澱粉、オイルなど)で十分なカロリーを補うことを指導しましょう。

合併症予防

糖尿病性腎症の患者さんは、腎臓だけでなく全身の血管に障害を抱えています。

腎機能の悪化は他の合併症とも関連するため、以下の視点で観察やアセスメントを行うことが重要です。

網膜症とセルフケア能力の確認

腎症のある患者さんは糖尿病性網膜症を併発していることが多く、視力低下や飛蚊症などの症状がある場合があります。

視力低下により血糖値の記録が困難になったり、インスリンの単位設定ミスが生じたりする場合があります。

必要に応じて拡大鏡を使用するなどの関わりを持ちましょう。

神経障害の影響

自律神経障害が進行すると胃腸の働きが悪くなる胃無力症(ガストロパレシス)や起立性低血圧が生じやすくなります。

便秘や下痢、食後の腹部膨満感の有無などを確認し、血糖変動の背景に神経障害が隠れていないか確認しましょう。

フットケアによる感染の早期発見

腎不全期(第4期以降)になると、免疫力の低下と神経障害による知覚低下が重なり、足の傷が壊疽へと進行しやすくなります。

フットケアの必要性と方法を指導しましょう。

観察した内容が、患者さんの日常生活にどのような影響を与えるのかといった視点は、患者さんのQOLの上昇につながります。

生活指導での伝えるコツ

糖尿病性腎症の患者さんは治療や制限内容も多く「わかっているけどやめられない」状態にあることも多いです。

そのような患者さんの心理に寄り添い、行動変容を促すヒントを解説します。

傾聴する

「◯◯しないでください」などの否定的な命令形は、患者さんの防衛本能を刺激する可能性があります。

その結果、隠れて行動するリスクを高めます。

患者さんの苦労に共感的フィードバックを行うことで信頼関係を築いていきましょう

スモールステップでの関わり

指導内容を一度に全て生活に取り込もうとすると患者さんの苦痛につながったり、継続できなかったりする問題があります。

100点を目指すのではなく10点の積み重ねの提案をしてみましょう。

例:1日2回飲んでいる味噌汁をまずは1回にしましょう。

やる気を引き出す変化トーク

患者さんに検査などの数値を伝えるときに患者さんのやる気に繋がる方法で行えると良いですよね。

数値の悪化を責めるのではなく、良い兆しを拡大して伝えましょう。

例:HbA1cは横ばいですが、体重が安定していて、水分の管理ができている証拠ですね。

患者さんが自分にはコントロールする力があると感じ、自己効力感が高まる言葉選びを意識しましょう。

家族へのアプローチ

糖尿病性腎症の食事療法は家族(特に調理担当者)の協力があってこそ成立するものです。

患者さんと家族を含めた食事内容の聞き取りや食事指導の場を作ることで、実現可能な自宅での食生活を確認していきましょう。

出汁、酸味、香辛料を生かした調理法を提案し、家族全員で取り組める健康食としての位置付けをサポートしましょう。

まとめ|患者さんの人生を守る保存期看護の実践

糖尿病性腎症の看護は劇的な回復が見えにくい地道なものです。

看護師が正確な知識を持ってアセスメントし、患者さんの心に寄り添った言葉を伝え続けるましょう。

看護師の支援は、患者さんの数年後のQOLの維持につながります。

保存期看護の真髄は病気を見ることに留まらず、病気と共に生きる人を支えることです。

透析を回避するという大きな目標に向かって、明日からの関わりをアップデートしていきましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献

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