「再入院をふせぐためには、どんな看護ケアがいいの?」
「利用者さんが重症化をふせげているか判断するにはどうすればいいの?」
訪問看護の利用者さんが家で長くくらすには、どんなアプローチがいいか迷った経験はありませんか?
緊急の受診や入院をくりかえすと、利用者さん・ご家族は安心したくらしを送りにくくなります。
自宅で重症化を予防するカギは、感染症対策です。
この記事では、在宅での感染症対策、在宅看護による重症化予防のアウトカム、在宅看護の重要性を解説します。
感染症にかかるリスクをおさえ、利用者さんが安心して家でくらせるようサポートしましょう。
在宅看護でおこなう重症化予防の感染症対策

家でくらす利用者さんが、再入院しないための最も有用性の高いアプローチは感染症対策です。
なぜ感染症対策へのアプローチが良いのか、エビデンスとくわしい内容について解説します。
重症化予防に感染症対策が有効な理由
感染症をふせぐ対策が再入院を遠ざけ、利用者さんは住みなれた場所でのくらしがつづけられます。
在宅療養者が再入院する原因の約25~27%は、感染症です。
感染症の内訳は以下のとおりです。
| 感染症 | 割合 |
|---|---|
| 敗血症 | 約7~11% |
| 呼吸器系 | 約5~7% |
| 尿路感染症 | 約4~6% |
| 皮膚または軟部組織 | 約2~3% |
| 静脈カテーテル | 約0.1~0.4% |
在宅で感染症を引きおこしやすい要因は4つあります。
- 免疫機能が落ちている(高齢者、免疫抑制剤の服用)
- 医療デバイスの管理が不十分になりやすい
- 感染のきっかけが発見されにくい
- ADLが低下している
在宅医療患者の入院転送の約45〜47%で入院時に感染症が認められ、感染症が主な原因の入院転送は25%以上と報告されています。
在宅看護による感染させない・悪化させないケアが重要です。
自宅での感染症対策は、利用者さんのくらしの質の安定につながっています。
在宅でできる感染症をふせぐ3つの対策
在宅でかかりやすい感染症をふせぐために、利用者さんの状態にあわせた対策が必要です。
在宅看護でできる自宅での感染症への対策は、以下の3つです。
- 口腔ケア
- カテーテル管理
- スタンダードプリコーション
3つの感染症への対策が、おもな再入院の理由である病気のリスクをおさえられます。
対策のポイントは、以下のとおりです。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 口腔ケア | ・肺炎をふせぐために効果的 ・自分で歯みがきができない利用者さんに、歯ブラシや口腔用スポンジで口腔ケアをする |
| カテーテル管理 | ・カテーテル関連感染症をふせぐために効果的 ・カテーテル類、特に膀胱留置カテーテルは感染リスクが高い ・ケア前後でかならず手洗い・手指消毒をおこない、使い捨て手袋を使う |
| スタンダードプリコーション | ・感染経路を断つために効果的 ・体液、粘膜、正常でない皮膚にふれる場合は、かならず手袋をつける ・こまめに手を洗い、必要なときはゴーグルやガウン、マスクを使う |
厚生労働省老健局
感染症への対策は、利用者さんをアセスメントしながらおこないましょう。
在宅看護のふだんの健康チェックから導きだされる対策が、感染症のリスクを下げるのです。
感染症対策の指導のポイント
在宅看護では、ふだんから利用者さん・ご家族へ感染症の予防についてアドバイスします。
訪問看護師は病院とちがい24時間観察できないため、利用者さん・ご家族にも注意してもらわなければなりません。
厚生労働省老健局が提示している、アドバイスのポイントは以下のとおりです。
- 発熱や体調がわるくなっているサインがでた場合は、訪問看護へ連絡する。
- くしゃみやせきが出るときは、マスクをつける。
- 家のなかでよくさわる場所を、そうじする。
- 定期的に窓を開けて換気をする。
- 適正な食事や水分、睡眠をとる。
- 予防接種を検討する。
- 手洗いをおこなう。
いっしょにくらしているご家族にも注意してもらうと、感染症にかかるリスクをおさえられます。
在宅看護では、利用者さん・ご家族による感染症の予防法の理解と実践するためのアドバイスが重要です。
感染症発生時の対応
感染症のサインがあった場合、すみやかな医師への報告が重症化をふせぐポイントです。
自宅で治療できる感染症であれば、家でのくらしがつづけられます。
厚生労働省老健局が提示している、訪問看護師がおこなう感染症発生時のケアは、以下のとおりです。
- ご家族へ利用者さんの状態を報告し、健康チェックのポイントや受診の目安をアドバイスする。
- 症状に応じて、マスク、ゴーグル、ガウン、手袋を組み合わせて適切に使用する。
- ご家族へ感染症の正しい情報をシェアし、介護負担が増えないようにする。
- ケアマネジャーに連絡し、利用しているサービスの調整をする。
- 訪問看護で使う機器やケア物品を消毒する。
- ケアの前後で手洗い、手指消毒をおこなう。
- 主治医に報告し、治療方針を確認する。
ふだんから感染症への対策やアドバイスをしていても、完全にはふせげません。
感染症のサインをはやい段階で見きわめ、スピード感がある対応が重症化をふせぎます。
在宅看護における「重症化予防」の定義とは?

訪問看護は、「いつものくらし」がくずれる前にサインを見つけ、入院させないためのアプローチをします。
在宅における重症化予防の考え方について解説します。
重症化予防の定義
在宅看護が重症化をふせぐ目的は、利用者さんの安心したくらしの継続です。
訪問看護は、病状の急な悪化をふせぐために健康リスクマネジメントをしなければなりません。
自宅での訪問看護における重症化予防は、以下のように考えられています。
当該疾患の状態が適切にコントロールされ、症状の悪化や身体機能の低下を防ぐこと
引用:高齢在宅療養者の訪問看護による重症化予防のアウトカム指標の検討(牛尾 裕子 2019:16)
自宅でくらす療養者の多くは、高齢者です。
高齢者のからだは、ギリギリのバランスで保たれており、体調のサインに気づきづらくなっています。
訪問看護では、利用者さんのからだの小さなサインをとらえ、くらしの場がくずれるのをふせぎます。
在宅看護による重症化予防のアウトカム
在宅で重症化をふせぐには、訪問看護師による健康チェックとセルフケア向上のためのアドバイスが重要です。
研究で、訪問看護が重症化をふせげているか判断できるアウトカムがあきらかになっています。
服薬の自己管理の改善が確認され、定期外受診の減少も含めると全ての事例について、救急車呼び出し回数の減少あるいは入院回数の減少など医療の利用が適正化されていた。
引用:高齢在宅療養者の訪問看護による重症化予防のアウトカム指標の検討(牛尾 裕子 2019:15)
訪問看護による重症化予防の成果は、2つの段階的なアウトカムとしてあらわれます。
行動面のアウトカムとして『適切な服薬管理』ができるようになります。
結果として臨床的なアウトカムである『急な悪化による受診・入院の減少』が達成できるのです。
利用者さんが『正しく服薬でき、かつ体調が安定している』状態であれば、訪問看護が重症化をふせいでいます。
在宅看護が重症化をふせぐ理由

利用者さんが住みなれた家・地域でくらすには、在宅看護が大きな役割をはたしているのです。
在宅看護が、利用者さんの重症化をふせぐ理由とポイントを解説します。
在宅看護の重症化をふせぐ4つのちから
訪問看護師が重症化をふせぐ背景には、4つのちからが機能しています。
重症化のリスクをはやい段階でキャッチできると、適切なケアができ、再入院をふせげます。
訪問看護師の重症化をふせぐ4つのちからは、以下のとおりです。
- 「いつもの様子」とちがうと気づけるこまやかな観察力
- 医師やケアマネジャーなどとのコミュニケーション力
- 24時間必要なときに医療・看護を提供できる対応力
- 急変リスクを考えた先回りの行動力
急な体調の悪化という利用者さんにとっての不安を、在宅看護のちからによって安心に変えます。
訪問看護でのチェックポイント
訪問看護師は、自宅を定期的に訪問し利用者さんの健康チェックや医療的なケア、薬の管理などをおこないます。
利用者さん・ご家族へのチェックをとおして、くらしをアセスメント・ケアしなければなりません。
訪問看護がおこなうチェックとケアのポイントは、以下のとおりです。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 健康チェック | ・体温、脈拍、血圧、酸素飽和度などのバイタルサイン ・自宅での血圧 ・自覚症状 ・むくみ ・体重 |
| くらしのチェック | ・床ずれやきずはできていないか ・薬の飲み忘れはないか ・外出状況 |
| ケア | ・ご家族への精神的なケア ・清潔ケア ・環境調整 |
訪問看護師によるチェックやケアは、くらし全体がわかるため、体調のサインもキャッチでき重症化をふせげます。
多職種連携
在宅看護では、医師やケアマネジャー、リハビリテーションとの連携も重症化をふせぎます。
訪問看護師を含め、医療・福祉のプロは利用者さん・ご家族をサポートするチームです。
チーム連携が重症化をふせぐケースは、以下のとおりです。
- せきと38度台の熱で受診すべきか相談された→医師に解熱剤の指示を確認し、服用してもらった。
- 家のなかに手すりがなく、転ぶリスクが高い→ケアマネジャーに知らせ、福祉用具の貸し出しとなった。
- 寝たきりの利用者さんに床ずれができた→リハビリテーションでポジショニングのアドバイスをした。
訪問看護からの情報のシェアによって、利用者さん・ご家族をサポートするケアがスムーズにおこなえます。
さまざまな医療・福祉のプロの視点からのアセスメント・ケアは、安心・安全なくらしを可能にします。
重症化をふせぐ在宅看護の社会的役割

家でのくらしは病院とくらべて、24時間医療のプロがいないため病状がわるくなりやすいです。
悪化のリスクをかかえながら家でくらす方に対する、在宅看護の社会的役割を説明します。
在宅看護の重要性
2012年から厚生労働省は以下のスローガンをかかげて、家でのくらしをすすめています。
「できる限り、住み慣れた地域で必要な医療・介護サービスを受けつつ、安心して自分らしい生活を実現できる社会を目指す」
スローガンの背景には、以下のような調査結果があります。
- 日本は2025年に4人に1人が高齢者となり、超高齢者社会になる。
- 60%以上の高齢者が、自宅で療養して必要になれば医療機関などを使いたいと考えている。
- 40%以上の高齢者が、要介護状態になっても自宅での介護を希望している。
年をとっても住みなれた家・地域でのくらしをえらびたい人が多いという結果です。
家でくらしたい人をサポートする在宅サービスは、訪問看護、訪問介護などさまざまなサービスがあります。
病気をかかえながらくらす人にとって、医学的にバックアップする在宅医療は重要なポジションです。
令和6年度診療報酬改定のチェックポイント
診療報酬改定は医療の質向上などを目的におこなわれ、2024年(令和6年)に見直されました。
令和6年度の改定では、訪問看護における退院当日の訪問や専門的なケアが手厚く評価されています。
今回の診療報酬改定における訪問看護の変更点は、以下のとおりです。
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 専門管理加算の新設 | 特定の疾患や状態に対して、高い専門性を持つ看護師(認定看護師、専門看護師など)の介入を評価 |
| 初回加算Ⅰの新設 | 病院から自宅へ戻った直後の「もっとも不安定な時期」への支援を評価 |
| 在宅医療情報連携加算の新設 | 医療機関とICTでリアルタイムに情報をシェアし、多職種でタイムリーに状態変化を捉える仕組みを評価 |
3つの変更点は、国が在宅での「重症化予防」を最優先の課題として捉えている証拠です。
在宅での重症化は再入院の大きな原因となるため、医療のプロによる対策が欠かせません。
在宅看護の重症化予防は「感染症対策」がカギ!
ここまで感染症対策の大切さ、重症化予防の定義、在宅看護の重症化予防の理由とポイント、社会的役割について解説しました。
重症化せず、家で安心してくらしつづけられる最も効果的なアプローチは、感染症への対策です。
エビデンスは以下のとおりです。
- 在宅療養者が再入院する原因の約25%は、感染症である。
- 在宅療養者は、感染症にかかりやすい要因を多くもっている。
利用者さん・ご家族も感染症対策をおこなえるよう、訪問看護によるケア・アドバイスも欠かせません。
訪問看護で感染症の治療・ケアができる場合は、自宅でのくらしをつづけられます。
在宅での重症化予防とは、主疾患がコントロールされ症状の悪化や身体機能の低下が予防されている状態です。
在宅看護は、医師・ケアマネジャーと連携しながら健康チェックや医療的なケアをおこないます。
感染症対策をすると、主疾患の病状もコントロールしやすく、再入院のリスクをおさえられます。
訪問看護の役割は、利用者さん・ご家族への医療・看護の提供による、くらしの質の向上です。
利用者さんが住みなれた家・地域で、1日でも長くその人らしくくらせるよう、看護のちからを注いでいきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
- Harrison JM, Dick AW, Stone PW, Chastain AM, Sorbero M, Furuya EY, Shang J. Infection trends in home health care, 2013–2018. Infection Control & Hospital Epidemiology. 2021;42(11):1388-1390. doi:10.1017/ice.2021.248
- 牛尾 裕子,「高齢在宅療養者の訪問看護による重症化予防のアウトカム指標の検討」,兵庫県立大学図書館,2019年
- 厚生労働省,「中医協総-2参考」,2023年
- 厚生労働省,在宅医療・介護推進プロジェクトチーム,「在宅医療・介護推進について」2013年
- 厚生労働省,「第10回社会保障審議会介護保険部会事務局提出資料(訪問看護)」,2023年11月10日

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