近ごろよく耳にする、エシカル消費。
メリットはすでにわかっているけれど、ときどき見かける問題点も気になりませんか?
エシカル消費が抱える問題は、消費者が薄々感じている違和感を映し出しているものが多くあります。
この記事では、代表的な問題点から自分なりのエシカルとの付き合い方を探るところまでをまとめました。
読み終えるころには、エシカル消費についての理解が一層深まり、暮らしのなかに無理なく取り入れることができるようにもなりますよ。
エシカル消費とは?

エシカル消費の意味と目的、そしていまエシカル消費が注目されている背景をみていきます。
まずは、「エシカル消費」について理解を深めていきましょう。
エシカル消費の意味と目的
エシカル消費の「エシカル(ethical)」は、「倫理的な」という意味です。
倫理的な消費について、消費者庁はつぎのように述べています。
地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮すること
引用:消費者庁「エシカル消費とは」
つまり、わたしたちは社会の課題を解決するために消費者としてできることをよく考え行動すること、さらに、社会的課題に取り組む事業者を応援する消費活動が求められているのです。
エシカル消費の目的は、消費活動で社会の倫理的な問題を解決することといえるでしょう。
たとえば、フェアトレードとオーガニックがあります。
- フェアトレード商品
商品にふさわしい価格を守り、継続的な取引ができるよう支援する仕組みのなかで、開発途上国の生産者が製造したものを指します。
- オーガニック商品
化学合成農薬や化学肥料をできる限り使わず、また遺伝子組み換え技術も利用しない自然の力を活かして生産された農産物、それを原材料とする加工食品、化粧品、衣類などのことです。
消費者がエシカルな商品を買うことは、商品に関わる人たちと、その人たちの過ごす社会や環境を守り、暮らしを支えることにつながるのです。
エシカル消費が注目される背景
エシカル消費が注目されるようになった背景には、まずSDGsがあります。
また、近年の世界情勢が消費者の意識を変えていることも注目される背景にあるでしょう。
SDGsは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)のことで、具体的な目標は17個あります。
エシカル消費は、そのなかの「つくる責任・つかう責任」と直結しているのです。
SDGsの目的は、世界的に深刻化する気候変動、労働問題などを解決すること。
近年の世界情勢に、危機感を抱く人は多いのではないでしょうか。
戦争や紛争、劣悪な労働環境と児童の強制労働の問題に、経験がないほどの自然災害。

日本にとっても、他人ごとではありませんよね。
いまの世界をすこしでも良い方へ変え、未来につなげるためには、消費者としての意識を変えていく必要があるということを多くの人が自覚し始めたからではないでしょうか。
一般家庭でできるエシカル消費の例
わたしたちが今日からできるエシカル消費の例を、3つご紹介します。
- マイバッグ、マイボトルを持つ
- 食品ロスを減らす
- ごみを正しく分別する
マイバッグ、マイボトルを持つ
自分専用の、繰り返し使える買い物バッグと水筒を用意します。
これで、ビニール袋を不必要に消費したり、プラスチックカップやペットボトルなどを大量に破棄することが減ります。
食品ロスを減らす
作りすぎた料理や、買いすぎて腐らせてしまった食材を破棄することがないよう工夫します。
おすすめは、週に1回、冷蔵庫の食材を空っぽにする日を設けることです。
すると、料理に使うのが苦手な食材やあまり使わない調味料を知ることができ、食料品の買いかたを考えるきっかけになります。
家庭で食品ロスについて見直すことは、子どもの食育にもいいでしょう。
買い物のときは、賞味期限・消費期限が迫った商品をあえて選ぶようにしてみます。
このような行動も、食品ロスを減らすことへの大きな貢献です。
ごみを正しく分別する
家庭で出るごみを、自治体のルールに従い正しく分別します。
これは、環境汚染を防ぐことと、資源の再利用という好循環のために必要なことです。
自分の買った物を、どのようにして終わらせ循環させるのかを意識して行動することも、消費者側ができるエシカルな消費活動といえます。
エシカル消費の代表的な問題点


ここからは「エシカル消費」に一歩踏み込み、問題点を挙げていきます。
さまざまな側面を知ることで、より理解を深めることにつながるでしょう。
価格が高く手が出しにくい
エシカル商品には、販売価格が高いという傾向があります。
消費者にとっては、経済的な負担が大きくなるでしょう。



どうして販売価格が高くなるのですか?



製造コストがかかるためです。
正当な人件費を確保したり、環境に配慮されたデリケートな製品を管理したり、かかっているコストはエシカル消費にとってなくてはならないものと言えるでしょう。
ゆえに、簡単に価格を下げることもできません。
日常的な買い物で手を出しにくい販売価格になっていることが、課題です。
情報の透明性が不十分
消費者が、エシカルを謳う商品の信ぴょう性を確かめる方法があまりないことも、問題点として挙げられます。
商品はほんとうに環境に配慮して生産されたものなのか、また労働者の待遇は適正なのかなどを知ることができなければ、エシカル消費は意味を成しません。
そのことを解決するために認証マークがありますが、取り組んでいる企業はまだまだ少ないようです。
それでも、消費者にとって信頼できる商品を探すときの基準であることには違いありません。
必要なときに役立てられるよう、どのような認証マークがあるのかを確認しておくことをおすすめします。
グリーンウォッシングのリスク
グリーンウォッシングの意味は、「実際の取り組みよりもおおげさに宣伝している」です。
たとえば、「地球にやさしい」「サステナブル」などを、それにふさわしい中身がないにもかかわらず強く印象付けようとすることをいいます。
日本では、2022年に消費者庁がグリーンウォッシングと判断した10社に対し措置命令を行いました。
参考:グリーンウォッシュ(見せかけの環境配慮)にご用心!~国際動向から日本におけるリスクの現状まで〜
企業の宣伝を信じて、知らずに騙されていたというリスクもあるのです。
エシカル消費がなかなか広がらない理由


ここまで見てきた問題点は、エシカル消費がなかなか普及しない理由と結びつきます。
問題点を、さらに深掘りしていきましょう。
消費者意識のギャップ
「わかっているけれど、行動に移せない」というのが、消費者意識のギャップです。
価格に見合った価値を実感するのがむずかしいことが、理由として考えられます。



たとえば、どのようなことですか?
たとえばエシカルな服を買った場合、デザインや機能性に満足することはできるのでしょうか。
同じような値段で、より満足できる商品があるとしたら、家計の負担などを考えると複雑な心境になることもありますよね。
こうしたストレスが、エシカル消費を遠ざけている可能性は充分にあります。
また、なかにはエシカル消費では社会の課題を解決することができないのではないか、と考える人もいます。
これは、「情報の透明性が不十分」という問題につながります。
エシカル消費の不完全さが気になり、積極的に関わることができないのです。
販売側の責任と限界
販売側が、エシカル消費のための責任と限界に直面しているという現状もあります。



もうすこし詳しく教えてください。
エシカル商品を信頼できるものとして売るためには、認証マークをつけなければなりません。
しかし、認証マークを取得するための費用とその資格を維持するための費用はともに高く、くわえて厳しい審査もあることから、なかなか簡単ではないようです。
たとえできたとしても、商品価格と消費者のニーズが合わなければ、事業者にとっての損失は多くなってしまいます。
品質を守り、生産者のための価格を維持し、環境のことも考えなければならないということです。
すべてを叶えることは、はたして可能なのでしょうか。
社会的インフラの未整備
エシカルな商品を買うことができる場所が限られているのも、エシカル消費の普及を遅らせています。
ネットで購入できたとしても、やはり、日常の消費活動は店頭の方が多いでしょう。
消費者がエシカルな商品を気軽に手に取れるような、販売環境の工夫が必要なのです。
しかし、実際の現場では陳列棚の獲得競争が激しく、すばらしいエシカル商品であっても、小さな会社から生まれた商品が消費者の目の届くところには並べられないというのが現状です。
この課題は、経営者にゆだねるところが大きくなりますが、消費者にできることもあるはずです。
消費者のエシカル消費に対する関心が高まることで、経営者はインフラの整備に動かざるを得なくなるでしょう。
わたしたちの意識と行動が、社会を変える力になるということです。
エシカル消費に対する批判や矛盾への理解


エシカル消費には、すばらしい面と問題点や課題があることがわかりました。
それらから見えてくる批判や矛盾点を3つまとめています。
自分に合ったエシカル消費を考えるための情報として、お役立てください。
- エシカルなのに非効率?というジレンマ
- 自己満足で終わるリスク
- 全員が参加できるかという課題
エシカルなのに非効率?というジレンマ
消費者側からすると、エシカル商品の価格の高さが気になります。
エシカル消費をすることで救われる人たちはいますが、自分たちの経済は効率よく循環しているのでしょうか。
家計への負担を考えた結果、消費意識が薄れていくことも——。
どこかに矛盾を感じ、もどかしい気持ちになります。
自己満足で終わるリスク
エシカル消費のつもりが、ただの自己満足で終わっている可能性があります。
バイオプラスチックは、化石燃料への依存を減らすというメリットがあり注目されています。
バイオプラスチックの商品を買うことは一見エシカル消費に思えますが、じつはそうとも言い切れません。
バイオプラスチックの生産には、大量の農地と水が必要です。
このことが、食料資源の枯渇や生態系への悪影響をもたらす可能性があるという見方もあるのです。
環境に配慮した商品が、別の面では環境に負荷をかけていることもあるのだとわかります。
自己満足で終わらないためには、エシカルと言われている商品のメリットとデメリットをよく知る必要があるのではないでしょうか。
全員が参加できるかという課題
所得や生活環境の違いは、すべての人がエシカル消費に参加できるのかという課題をつくってしまいます。
高価格なエシカル商品は、経済的に余裕のある人たちには選べても、低所得者層にとっては苦しい買い物になるでしょう。
このようなことは、エシカル消費が社会的な不平等を感じるきっかけになりかねません。
自分なりのエシカルとの付き合い方とは


「エシカル消費」についての理解が充分に深まったところで、自分なりのエシカルとの付き合い方を考えてみます。
完璧を目指さず「できる範囲」で
完璧は目指さず「できる範囲」で取り組みます。
気軽にはじめられることを、見つけましょう。
マイバッグ、マイボトル、食品ロス、ごみの分別といった、身近な実践例も挙げました。
ほかにも、毎日使うメイク道具のなかから1つだけエシカルなものに変えてみるという方法があります。
地元の農家さんが作る野菜を買うというのもいいでしょう。



無理をせずできることから、一歩ずつ踏み込んでみると続けやすいですよ。
情報リテラシーを高めるコツ
エシカル消費とうまく付き合うためには、誤情報に惑わされないよう情報リテラシーを高めることが大切です。
まずは、認証マークをチェックするようにします。
認証マークには、次のようなものがあります。
- 国際フェアトレード認証ラベル
- 有機JASマーク
- エコマーク
- MSC認証海のエコラベル
- FSC®認証
- 伝承マーク
- レインフォレスト・アライアンス認証
時代の経過とともに、認証マークにも変化は起こるでしょう。
大切なのは、正しいエシカル消費のためには、認証マークを確認する方法があるということを知っておくことです。
商品の由来が気になるときには、公式ホームページを調べます。
これらのようにして確認する習慣をつけると、エシカル消費についての情報リテラシーを高めることができますよ。
家族と一緒に考えることの大切さ
身近な人たちとエシカル消費について考えることは、社会全体の消費意識を変える大きな一歩になるでしょう。



考えるためのきっかけになるような話題は、なにかありますか?
つぎのような話題を見つけました。
いま、必要最低限のものだけを買いたい、あるいは使いすぎを防ぎたいといったエシカル消費のニーズが広まっています。
そのような人たちは、クレジットカードの利用に抵抗を感じるのだそうです。



このような消費行動について、自分はどうだろうと考える時間をつくってみるのはいかがでしょう。
家族の買い物計画や、旅行計画を立てるときなど、お金にまつわる話をするときに「エシカル消費」の話題にも触れてみるといいかもしれませんね。
まとめ:エシカル消費の問題点とは?知ることから始めよう
エシカル消費は、いまの人類と地球にとって大切なことです。
しかし、実践するうえでの問題点や課題を抱えていることがわかりました。
日常に取り入れることをむずかしいと感じるときには、まず知ることから始めてみましょう。
それだけでも、なにかを選択するときの考え方はきっとこれまでとは違い、新しい価値観の自分自身を垣間見ることができるはずです。
- エシカル消費とは、地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した倫理的な消費のこと
- エシカル消費が注目される背景には、SDGsの達成や近年の世界情勢、地球環境問題の深刻化がある
- 一般家庭でできるエシカル消費には、「マイバッグ、マイボトル」「食品ロスを減らす」「ごみを正しく分別する」などがある
- 価格が高く手が出しにくい
- 情報の透明性が不十分
- グリーンウォッシングのリスク
- 消費者リスクのギャップ
- 販売側の責任と限界
- 社会的インフラの未整備
- 完璧を目指さず「できる範囲」で取り入れる
- コツをつかんで、情報リテラシーを高める
- 家族と一緒にエシカル消費について考える時間をつくる
エシカル消費の取り組み方をさらに詳しく知りたい方には、こちらの記事もおすすめです。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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