年齢的にはそろそろ閉経かしら…。いつなるかもわからないし不安…。
あなたは「閉経は月経が来なくなること」だと知っていますよね。
しかし、閉経によって体にどのような変化が起こるかは、くわしく知らない人のほうが多いでしょう。
また、閉経の時期に起こる「更年期障害」について聞きかじって、漠然とした不安を抱えていませんか?
しかし、安心してください。
この記事では、産婦人科医である筆者が、閉経について体に起こる変化から検査まで徹底解説します。
閉経についてよく知れば、その不安も解消されますよ!
どうぞ最後までお読みください。
【閉経】検査で分かる?知っておきたいポイント3つ
閉経は卵巣の活動性が低下して月経が来なくなった状態です。
閉経を理解するには、どのようなことを知っておけばよいのでしょうか?
知っておきたいポイントは以下の3つです。
- 閉経は12ヶ月以上月経が来ないことを確認して判定される
- 閉経の前後では女性ホルモンが急激に変化している
- 検査で閉経の予兆はわかるが、予測することは難しい
ひとつずつ説明しますね。
閉経とは12ヶ月以上月経が来ないこと
閉経とは、女性ホルモンを分泌している卵巣の活動が低下して、月経が来なくなることです。
基準としては、「12ヶ月以上月経を来ないことを確認して閉経と判定する」とされています。
閉経って、最後の月経のときにはわからないんですね。
そうですね!
12ヶ月後に、それが最後の月経で、その時が閉経だと判定します。
手術で子宮を摘出した場合は、月経によって閉経を判断できないので、血液検査で確認します。
「FSH 40mIU/mL かつエストラジオール(E2) 20pg/mL以下」の場合に、閉経後であると判断されます。
「FSH」「エストラジオール」については次の項でくわしく説明します。
閉経前後で女性ホルモンは急激に変化する
上の図は女性ホルモンの変化を表したグラフです。
このように閉経前後で急激に変化しています。
卵巣の活動が低下してくるため、エストラジオールといった女性ホルモンが低下します。
一方で卵巣を働かせようとFSH(卵胞刺激ホルモン)が上昇します。
ホルモンの急激な変化によって、体にも様々な変化が起こります。
くわしくはあとで説明しますね!
検査では閉経の時期を予測するのは難しい
月経痛や月経量が多くて困っている患者さんにとっては、いつ閉経するかは重大な問題です。
月経の終わりが分かるなら早く知りたいという気持ちがあるようで、なんとか予測できないかと質問されます。
女性ホルモンの検査をすれば閉経の時期がわかるのですよね?
血液検査の結果を閉経の判断材料にするものの、時期を正確に予測するのは難しいのが現状です。
上のグラフを見てください。
女性ホルモンは減少していきますが、まっすぐ減少するのではありません。
グラフのように細かく増減しながら(ゆらぎながら)、減少していきます。
この「ゆらぎ」は下記のようなメカニズムで起こります。
- 女性ホルモンが低下する
- 脳は卵巣を刺激するためFSHの分泌を増加させる
- 卵巣は女性ホルモンを増やそうとする
- 卵巣機能の低下によって分泌量にムラが出る
このゆらぎのために、予測が困難になるのです。
たとえば、血液検査で卵巣機能が良好だという結果が出ても、一時的に良かったときに測定した可能性を捨てきれません。
あとどのくらいの期間卵巣機能が維持できるかは未知数です。
卵巣機能の低下が見られても、閉経が近づいていることはわかるものの、閉経までの期間を評価するのは難しいのです。
閉経前後のホルモン変化のパターンは個人差も大きいと考えられています。
NIH(米国国立保健研究所)2002国際方針声明でも下記のように明記されています。
ほかにも閉経に関する検査はありますか?
AMHという項目が有用な可能性があります。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)とは、発育している卵胞の細胞から作られるホルモンで、卵巣に卵子がどのくらい残っているか(卵巣予備能)の指標です。
閉経の5年前には測定できないくらい減少するという報告もあり、閉経の予測因子としても研究が進められています。
しかし、現時点では、一般的な診療で使えるほどの正確な予測は困難です。
- FSH(卵巣刺激ホルモン):卵巣を刺激するホルモン
- E2(エストラジオール):女性ホルモンの一種
- AMH(抗ミュラー管ホルモン):卵巣予備能の指標
ただし、閉経の予兆はわかっても、正確に閉経時期を予測することは困難
【閉経】体で起こる変化を知って対策を
これまで説明したように、閉経の前後では女性ホルモンがゆらぎながら急激に減少します。
では、女性ホルモンの変化によって、体ではどんな変化が起こるのでしょうか?
代表的な変化は以下の2つです。
- 閉経前には月経不順がおこることが多い
- 更年期障害が起こる可能性がある
- 骨密度や脂質(コレステロールや中性脂肪)に影響が出てくる
一つずつ説明しますね。
月経不順
閉経の前兆みたいな症状はありますか?
閉経前にはほとんどの人で月経不順が見られます。
これもよく患者さんから質問されますが、閉経の前兆についてです。
閉経前にほとんどの人でおこる症状としては、月経不順です。
典型的な経過は以下の通りです。
月経の来る周期が短くなる→月経の来る周期が長くなる→閉経
ただし、月経周期の乱れの自覚がないまま閉経する人もいます。
そのため、個人差が大きいと考えられています。
更年期障害
更年期とは閉経をはさんで前後5年間、合計10年間のことです。
日本人女性の閉経の平均は50歳頃ですので、50歳を閉経とすれば45歳から55歳の間ということになります。
この時期に出てくる不調を更年期症状、それが日常生活に支障を来すようになれば更年期障害と呼びます。
更年期症状は以下のようにさまざまなものがあります。
- ホットフラッシュ「のぼせ」「ほてり」「発汗」
- 冷え
- 精神的な症状 いらいら、不安感、眠れない
- 膣乾燥感・性交痛
- 息切れ、めまい
- 関節痛
- 物忘れ
症状の出方には個人差が大きく、ほとんど症状を感じない場合もあれば、いくつもの症状が出現する場合もあります。
更年期障害の原因は以下の3つです。
- 女性ホルモンのゆらぎをともなう急激な変化
- もともとの性格
- 環境のストレス
女性ホルモンの変化は自分ではどうすることもできません。
しかし、ストレスや性格は以下のような心がけで症状を軽くすることが可能です。
- 規則正しい生活を送り、自律神経のバランスを整える
- ストレスをためないように、自分をおいつめず、自分を優しくいたわる
- 大豆イソフラボンやエクオールなどを取り入れる
それでも、更年期症状がつらいようであれば、我慢しすぎずに婦人科を受診しましょう。
ホルモン補充療法、漢方療法などの治療により、症状が楽になることも多いです。
また、更年期症状の中に、違った病気が隠れていることもあります。
そういった意味でも、症状が強いようであれば、婦人科受診をしたほうがよいでしょう。
- ホットフラッシュなどさまざまな症状がある
- 女性ホルモンの変化だけでなく、ストレスやもともとの性格も原因となる
- 症状が強いようであれば病院受診し治療や精査が必要
骨や脂質への影響
更年期症状、気をつけたいです。
症状が楽にすめば、もう気をつけることはないですよね?
いえいえ、症状がなくても気をつけたいことがあります。
骨やコレステロール、中性脂肪にも影響があると言われています。
女性ホルモンが変化することで起こる体の変化は更年期症状だけではありません。
女性ホルモンが減少することで、骨の代謝に影響し、骨密度が低下しやすくなります。
また、女性ホルモンには、善玉コレステロールを増やして悪玉コレステロールを減らしたり、血液中の中性脂肪を減らす効果があります。
そのため女性ホルモンが減少することで、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が増えやすくなるのです。
骨密度低下は骨折するまで、血液中の脂質の悪化は動脈硬化が進んで病気を発症するまで、症状がありません。
生活習慣に気をつけるとともに、健診の機会なども利用して骨密度やコレステロール、中性脂肪の値にも気を配るようにしたいですね。
- 血液中の悪玉コレステロールが中性脂肪が増えやすくなる
- 骨密度が低下しやすくなる
【閉経】検査から症状、対処法、注意点まで まとめ
この記事では閉経について、検査から症状、対処法や注意点について解説しました。
閉経で知っておきたいポイントは以下の3つでした。
- 閉経は12ヶ月月経が来ないこと
- 閉経の前後で女性ホルモンが急激に変化している
- 閉経は検査で予兆はわかるが、時期の予測は難しい
閉経の前後で女性ホルモンは急激に変化し、体でも変化が起こります。
体に起こる変化、注意したいポイントは以下の3つでした。
- ほとんどの人で閉経前に月経不順となる
- 更年期症状が出現する可能性がある
- 骨密度が低下しやすく、血液中の悪玉コレステロールや中性脂肪が上昇しやすくなる
閉経について事前に知っておけば、適切に対応することが可能です。
閉経ついて知って、今後の生活にいかしていきたいですね。
閉経前後の時期には骨密度検査もおすすめの検査の一つです。
骨密度検査について知りたい方は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント