筋力の低下により「立つ」「歩く」などが困難になるロコモティブシンドローム。
ロコモティブシンドロームは、高齢者がなるものだと思っていませんか?
筋肉量のピークは20~30代であり、その後、加齢により減少し40歳ごろから衰え始めるといわれています。
最近、ちょっとした段差につまずいたり、階段を上がったら息切れしてしまって、しんどいって思うことが増えました……。
外出時など「目的地まで歩いて行けるかな?」と不安になりますよね。
年齢を重ねるにつれて、意識して身体を動かすようにしないと筋肉が衰えてしまいます。
なかでもお尻や太ももなど、大きな筋肉がある下半身は筋力が低下しやすいです。
下半身の筋力が低下して歩けなくなったり、歩けてもすぐに疲れてしまったりしたら、将来が不安ですよね。
この記事では、自分でできるロコモティブシンドロームの診断方法と予防方法について説明しています。
「ロコモティブシンドロームってどんな症状なの?」
「予防するにはどうしたらいいの?」
など、気になった方はぜひ最後までお読みください。
ロコモティブシンドローム(略称ロコモ)とは
ロコモティブシンドロームとは、体を動かすための組織・器官に障害が生じることで、将来歩けなくなる恐れがある状態のことです。
骨や筋肉、関節や神経などの機能が低下することにより起こります。
簡単にいうと「筋力の低下」と「移動動作の低下」のことです。
ロコモティブシンドロームを略して「ロコモ」ともいいます。
年齢を重ねるにつれて、運動器(体を動かすための組織・器官)に障害が起こり、日常生活に介助が必要になる人が増加しています。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」をもとに日本整形外科学会が作成したグラフによれば、近年、要介護・要支援の原因の24.8%が運動器障害によるものです。
高齢になっても歩けるようにするには、健康維持に関心をもち、運動器の機能低下を防ぎ、予防することが必要です。
ロコモティブシンドロームの診断方法と判定基準【一つでも当てはまると要注意】
筋力が低下するのは、高齢者だけではありません。
年齢を問わず、早い人では40歳くらいから始まることもあります。
日本整形外科学会ではロコモ診断ができる7つのチェック項目を挙げています。
チェック項目によってあなたのバランス能力や筋力、歩行状態を知ることができますよ。
ご自身にいくつ当てはまるか、下の表でチェックしてみてくださいね。
- 片足立ちで靴下が履けない
- 家のなかでつまずいたり滑ったりする
- 階段をあがるのに手すりが必要である
- 横断歩道を青信号で渡りきれない
- 15分くらい続けて歩けない
- 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である
- 家のやや重い仕事が困難である
どれも日常の動作でありがちな場面ですね。
7つのチェックリストに一つでも当てはまった方は、運動器が衰えているサインです。
このあと、さらに詳しく診断できる方法を3つご紹介します。
当てはまったからといって、すぐに歩けなくなるわけではありません。
あわてず、ひとつずつチェックしていきましょう。
ロコモテスト1【立ち上がりテスト】
診断方法の1つめは、立ち上がりテストです。
台や椅子を使用して下肢筋力を測ります。
ロコモ度1~3まで診断ができ、数字が大きいほうが危険度が高いです。
以下の手順で、広い安全な場所で行ってください。
- 両足40cmができなかった人 → ロコモ度3
- 両足30㎝でできた人→ロコモ度2
- 両足20㎝でできた人→ロコモ度1
- 40㎝の片足テストができた人は→30㎝→20㎝へすすみます。
- 40㎝の片足テストができなかったら→30㎝→20㎝の両足テストへ戻ります。
- ロコモ度1
-
どちらか一方の足で40㎝の台から立ち上がれないが、両足で20㎝の台から立ち上がれる
- ロコモ度2
-
両足で20㎝の台から立ち上がれないが、30㎝の台から立ち上がれる
- ロコモ度3
-
両足で30㎝または40cmの台から立ち上がれない
簡単ですし、気になったときすぐに判定できますね!
身近な人に試してもらいました! ロコモテスト1
50代の筆者の結果はロコモ度1でした。
かろうじて20㎝の台から両足で立つことができましたが、40㎝の台からの片足立ちができませんでした。
始める前は「このくらい簡単よ」と思っていましたが、膝に力を入れることすらできませんでした。
「できないのは私だけ?みんなはどのくらいできるのかな?」と思い、自分ができなかったショックで知人を巻き込んで実際にやってもらいました。
30代……3名
40代……2名
50代……5名
【計10名】
【40cmの片足立ち】
びっくりしたことに、結果は……
50代の人は5人に試してもらって全員できませんでした。
30代3名は余裕でできていました。
40代の2名はかろうじて片足で立てましたが、3秒キープが左右に体がゆれて、ギリギリでした。
つまり、50歳以上になると、自分では自覚していないが、かなり筋力が低下しているということです。
自分で思っているよりも難しいものなんですね。
挑戦した50代5名は、口々に「まさかできないとは思わなかった」「将来、歩けなくなるのは嫌だ」と言っていました。
「運動を始めるきっかけができた」とも言ってくれましたよ。
ロコモテスト2【歩幅を調べるテスト】
2つめの診断は、歩幅を調べるテストです。
歩幅を調べることで、下肢の筋力、バランス能力・柔軟性などを含めた歩行能力を評価します。
【判定方法】
2歩数(㎝)÷身長(㎝)⁼2ステップ値
1.1以上1.3未満→ロコモ度1
0.9以上1.1未満→ロコモ度2
0.9未満→ロコモ度3
歩幅は普段あまり気にすることがないのですが、大事なポイントなんですね。
ロコモテスト3【25項目チェックリスト】
このテストでは、身体の状態、生活状況からロコモ度を測定します。
Q. 各設問に対し、最も当てはまるものに○をつけてください。
(1:そう思わない または 困難でない 2:ややそう思わない または 少し困難 3:どちらともいえない または 中程度困難 4:ややそう思う または かなり困難 5:そう思う または ひどく困難)
チェックリストの評価の1から5がそれぞれ何個かチェックし、下の表に当てはめて計算してください。
計算された点数によって、ロコモ度がわかります。
【25項目チェックリスト】
質問内容 | 評価 | |||||
1 | 頚・肩・腕・手のどこかに痛み(しびれを含む)がありますか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
2 | 背中・腰・おしりのどこかに痛みがありますか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
3 | 下肢(脚のつけね、太もも、ふくらはぎ、すね、足首、足)のどこかに痛み(しびれも含む)がありますか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
4 | 普段の生活で体を動かすのはどの程度つらいと感じますか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
5 | ベッドや寝床から起きたり、横になったりするのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
6 | 腰掛から立ちあがるのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
7 | 家の中を歩くのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
8 | シャツを着たり脱いだりするのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
9 | ズボンやパンツを着たり脱いだりするのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
10 | トイレで用足しをするのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
11 | お風呂で身体を洗うのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
12 | 階段の上り下りはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
13 | 急ぎ足で歩くのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
14 | 外に出かけるとき、身だしなみを整えるのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
15 | 休まずにどれくらい歩き続けることができますか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
2~3㎞以上 | 1㎞程度 | 300m程度 | 100m程度 | 10m程度 | ||
16 | 近所に外出するのはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
17 | 2Kg程度の買い物をして持ち帰ることはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
18 | 電車やバスを利用して外出するのがどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
19 | 家で食事の準備や片づけなどはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
20 | 掃除機での掃除や、布団の上げ下ろしなどはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
21 | スポーツや踊り、水泳などはどの程度困難ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
22 | 親しい友達や友人とのお付き合いを控えていますか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
23 | 地域での活動やイベント、行事への参加を控えていますか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
24 | 家の中で転ぶのではないかと不安ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
25 | 先行き歩けなくなるのではないかと不安ですか。 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 |
ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト
評価1 ( 個)×0点
評価2 ( 個)×1点
評価3 ( 個)×2点
評価4 ( 個)×3点
評価5 ( 個)×4点
合計 点
【判定結果】
7点以上→ロコモ度1
16点以上24点未満→ロコモ度2
24点以上→ロコモ度3
自分自身でどう思うかも大切なポイントなんですね。
確かに若い頃に比べて、体力の衰えを感じます。
この章では、自分でできるロコモテストを3つお伝えしました。
3つの診断はそれぞれ違う観点からのチェックですので、必ずしも同じ結果になるとは限りません。
どれかひとつでもロコモ度2、3に該当した方は、整形外科専門医の受診をおすすめします。
ロコモ度1に当てはまった方でも今から予防すれば大丈夫ですよ。
次の章ではロコモティブシンドローム予防のポイントをお伝えします。
ロコモティブシンドローム予防のポイント
将来、寝たきりになったり、歩けなくなったりするのは避けたいですよね。
ロコモティブシンドロームにならないためには、どうすればよいのでしょうか?
ロコモティブシンドロームを予防するためのポイントを2つお伝えしますね。
予防は40代の今から始めることが大切です。
どれも簡単にできることばかりですので、ぜひ取り組んでみてくださいね。
「ロコトレ」を日常生活に取り入れよう
ロコモティブシンドロームを予防するための運動を「ロコトレ」といいます。
ロコトレは以下の2つだけです。
- 片足立ち
(バランス能力をつける) -
立った状態で片足を上げる。
左右ともに1分間で1セットとし、一日3セット行う。 - スクワット
(下半身の筋力をつける) -
足を肩幅に広げ、お尻を引くように2~3秒かけてゆっくりと膝を曲げ、ゆっくりと元に戻る。
5~6回で1セットとし、一日3セット行う。
上記をめやすに、毎日ロコトレをすることをおすすめします。
時間を決めて取り組むなど生活リズムに合わせて行いましょう。
少しの回数でも継続して行うことが大事です。
やってみました!ロコトレ
筆者もさっそく、スクワット各10回と片足立ち2セットをそれぞれ朝と晩に10日続けました。
10日目にようやく、片足で立てるようになりました!
私は毎日、フルタイムで仕事をしているので「このくらいは大丈夫!余裕、余裕」って思っていました。
最初、立てなかったショックは大きかったです……。
継続は力なりです!
続けていくと、膝やふくらはぎに力がはいる感覚がわかるようになりました。
ロコトレの他にも、以下のようなことを意識するだけでも、筋力アップが期待できますよ。
- 歯磨きや料理をしながらの片足立ち
- トイレで便座に座る時に5秒かけてゆっくり座る
- 室内をつま先立ちで歩く
- 一日30分のウォーキング
- 一駅手前で電車を降りて歩いてみる
- エレベーターやエスカレーターを使用せず、階段を使う
- 寝る前、起きる前のストレッチ
- 近くの買い物は徒歩で!
- 歩く時には歩幅を広めに
これなら普段の生活のなかに取り入れられそうです!
バランスのとれた食事をこころがけましょう
栄養素を十分に摂取することは、丈夫な身体をつくり、健康に過ごすために必要です。
- 骨のもとになる
-
タンパク質・カルシウム・ビタミンD・ビタミンK
- 筋肉のもとになる
-
良質なタンパク質
- 体を動かすエネルギー源になる
-
炭水化物・脂質
各栄養素が含まれるおすすめの食品はこちらです。
- たんぱく質(鶏の胸肉 ささみ 豚肉のもも 鯖 豆腐 たまご)
- カルシウム(牛乳 ヨーグルト チーズ イワシ 小松菜 青梗菜 )
- ビタミンK(ほうれん草 抹茶 納豆 ブロッコリー)
- ビタミンD(きのこ 鮭 きくらげ)
食品で覚えておけば、栄養を摂りやすいですね。
健康な体をつくるには、まず食事から!
一度に摂取することが難しくても、数回に分けて摂るようにしましょう。
【まとめ】いつまでも自分の足で元気に歩こう!
今回は、ロコモティブシンドロームとその診断方法、予防のポイントをお伝えしました。
- ロコモティブシンドロームは運動器の障害による移動機能の低下
- 筋力は40代から衰えはじめるため、ロコモ予防を心がけることが大切
- ロコモテストでセルフチェックしよう
- ロコトレやバランスのよい食事で普段からロコモ予防しよう
まずはロコモチェックを行い、今の自分を知ることから始めましょう。
「自分は大丈夫」と思っていても、ロコモチェックをすることで筋力の低下を実感するかもしれません。
現状を知ることで、早くから予防に取り組めますよ。
加齢による筋力低下や筋肉の萎縮は、下半身から起こりやすいです。
難しく考えずに、簡単な運動を日常生活に取り入れてみましょう。
すべての基盤は健康の上に成り立っています。
いつまでも自分の足で歩き、活動できるように少しずつ体力を蓄えていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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